母娘で行った初めてのバリ島 -続編-
板山美枝子
娘と2人でやって来たバリ島。まだ寒い早春の日本から7時間で常夏の島に着いた。日本から着てきたコートやセーターを半袖のTシャツに着替えてバリ島の旅が始まった。
朝、ホテルのレストランで朝食。プールサイドに面したオープンエアのレストランは、外からの風を感じる開放的な空間だ。バイキングスタイルの朝食メニューは、数種類のパン、ミーゴレン(焼きそば)、フルーツ(メロン、パイナップル、スイカ)、飲み物(コーヒー、オレンジジュース)など。パイナップルがオシャレな花形に切ってある。何だかセンスが良い。
朝食後の9時半に、一日観光ガイドをお願いしてあるMEGUMIさんが車で迎えに来た。まず、最初に両替屋さんに連れて行ってもらい、お金の両替をする。日本円が分厚いルピアの札束に変わり、すごい金持ちになった気分♪
最初に行ったのはバティック(インドネシア更紗)の工房。手描きのろうけつ染めの実演と工程を見学。一つ一つ手描きで布に模様を描いていき、幾つもの工程を経て完成される。非常に細かく、手間のかかる作業だった。次に行ったのはアタの工房。アタとは草の一種で、硬い茎を編んで篭や小物入れなどの雑貨を作る。編まれた篭は、煮沸して燻製にされ、乾燥して出来上がる。これで完全に殺菌され虫やカビの発生がなくなり、防腐効果があるという。完成されたアタの篭を手に取ると、燻製の匂いがする。
この日の最後は、一番楽しみにしていたウルワツ寺院のケチャダンス。ウルワツ寺院は断崖絶壁の上にあり、夕陽をバックに演じられるケチャダンスで有名だ。そしてここで大事件が勃発! 開演時間の5時ギリギリに着くと、会場のほうからもうケチャの歌が聴こえてくる。はやる気持ちを抑えながら、陽が沈む前に記念撮影をと、MEGUMIさんにデジカメのシャッターを押してもらった。・・・と、その時、「きやぁ〜」という娘の声! いったい何が起こったかと思えば、猿が娘の携帯電話をひったくって逃げて行く・・・。「返して〜」と叫ぶ娘の声は半分泣き声だ。猿はあっという間に柵の向こうの崖っぷちに逃げて行きこちらを向いて座り、次の瞬間、崖の下に消えていった。命の次に大切な携帯電話を獲られた娘は呆然としていた。寺院の敷地内にはたくさんの猿が生息しており、観光客のメガネや帽子を奪っては逃げて行くので気を付けるようにと言われてはいたが・・・。
ケチャダンスはすでに始まっていた。「チャッチャッチャッ」という男性集団の掛け声と共にラーマヤーナ劇が繰り広げられていく。しかし娘は心ここにあらず・・・。その時、MEGUMIさんがやって来て娘に何かささやいた。娘はMEGUMIさんと一緒に会場から出て行った。しばらくして戻ってきた娘は、「バリ人のおじさんが、50万ルピアの礼金を払えば猿から携帯電話を取り戻してきてくれるらしい」と言う。50万ルピアは日本円で6500円ほど。娘にとっては決して安い額ではないが、命の次に大事な携帯電話には代えられない。自分のお小遣いから礼金を払うことを承諾しておじさんに携帯の奪還を依頼した娘。さっきとは打って変わって明るい表情になっていた。ケチャダンスは、悪と正義の激しい戦いを繰り広げている。やがて、水平線に陽が沈み始めた。夕陽をバックにしたダンスはいよいよ佳境を迎える・・・。その時、MEGUMIさんがまた娘を呼びに来た。どうやら携帯電話奪還作戦は成功したもよう。喜び勇んで娘は会場を去って行く。陽が沈みきって暗闇に包まれた舞台に、何やら大きな藁のかたまりが並べられていく。そして周囲に灯油をまいていった。いったい何が始まるのか・・・・?
次の瞬間、たいまつを持った男たちが現れ、藁に火をつけていく。火は燃え上がり、うす暗かった会場があっという間に炎で照らされる。そして燃えさかる火の中でハヌマン(猿の神様)が、踊りながら火を蹴散らしていく。そのすさまじい勢いは、まるで本当に神様が宿っているかのようだ。よく見ると足は素足。「熱くないのだろうか?」・・・、これが有名なファイアーダンスだった。ケチャダンスは一種のトランス状態で演じられている。だからきっと、素足で火を蹴散らしても熱く感じないのかもしれない。それにしてもすごい。
後で聞いた話だが、あのハヌマン役の男性は駐車場で切符を切っていた人らしい。そんな普通の人がスーパーヒーローに変身してしまうのだ。そして、90度の断崖絶壁を降りて、猿が捨てた携帯電話を取り戻して来てくれたおじさんもすごい。バリには本当に神々が住んでいるのかもしれない。普通のおじさん達が実は神々の化身だったりして・・・?
朝、ホテルのレストランで朝食。プールサイドに面したオープンエアのレストランは、外からの風を感じる開放的な空間だ。バイキングスタイルの朝食メニューは、数種類のパン、ミーゴレン(焼きそば)、フルーツ(メロン、パイナップル、スイカ)、飲み物(コーヒー、オレンジジュース)など。パイナップルがオシャレな花形に切ってある。何だかセンスが良い。
朝食後の9時半に、一日観光ガイドをお願いしてあるMEGUMIさんが車で迎えに来た。まず、最初に両替屋さんに連れて行ってもらい、お金の両替をする。日本円が分厚いルピアの札束に変わり、すごい金持ちになった気分♪
最初に行ったのはバティック(インドネシア更紗)の工房。手描きのろうけつ染めの実演と工程を見学。一つ一つ手描きで布に模様を描いていき、幾つもの工程を経て完成される。非常に細かく、手間のかかる作業だった。次に行ったのはアタの工房。アタとは草の一種で、硬い茎を編んで篭や小物入れなどの雑貨を作る。編まれた篭は、煮沸して燻製にされ、乾燥して出来上がる。これで完全に殺菌され虫やカビの発生がなくなり、防腐効果があるという。完成されたアタの篭を手に取ると、燻製の匂いがする。
この日の最後は、一番楽しみにしていたウルワツ寺院のケチャダンス。ウルワツ寺院は断崖絶壁の上にあり、夕陽をバックに演じられるケチャダンスで有名だ。そしてここで大事件が勃発! 開演時間の5時ギリギリに着くと、会場のほうからもうケチャの歌が聴こえてくる。はやる気持ちを抑えながら、陽が沈む前に記念撮影をと、MEGUMIさんにデジカメのシャッターを押してもらった。・・・と、その時、「きやぁ〜」という娘の声! いったい何が起こったかと思えば、猿が娘の携帯電話をひったくって逃げて行く・・・。「返して〜」と叫ぶ娘の声は半分泣き声だ。猿はあっという間に柵の向こうの崖っぷちに逃げて行きこちらを向いて座り、次の瞬間、崖の下に消えていった。命の次に大切な携帯電話を獲られた娘は呆然としていた。寺院の敷地内にはたくさんの猿が生息しており、観光客のメガネや帽子を奪っては逃げて行くので気を付けるようにと言われてはいたが・・・。
ケチャダンスはすでに始まっていた。「チャッチャッチャッ」という男性集団の掛け声と共にラーマヤーナ劇が繰り広げられていく。しかし娘は心ここにあらず・・・。その時、MEGUMIさんがやって来て娘に何かささやいた。娘はMEGUMIさんと一緒に会場から出て行った。しばらくして戻ってきた娘は、「バリ人のおじさんが、50万ルピアの礼金を払えば猿から携帯電話を取り戻してきてくれるらしい」と言う。50万ルピアは日本円で6500円ほど。娘にとっては決して安い額ではないが、命の次に大事な携帯電話には代えられない。自分のお小遣いから礼金を払うことを承諾しておじさんに携帯の奪還を依頼した娘。さっきとは打って変わって明るい表情になっていた。ケチャダンスは、悪と正義の激しい戦いを繰り広げている。やがて、水平線に陽が沈み始めた。夕陽をバックにしたダンスはいよいよ佳境を迎える・・・。その時、MEGUMIさんがまた娘を呼びに来た。どうやら携帯電話奪還作戦は成功したもよう。喜び勇んで娘は会場を去って行く。陽が沈みきって暗闇に包まれた舞台に、何やら大きな藁のかたまりが並べられていく。そして周囲に灯油をまいていった。いったい何が始まるのか・・・・?
次の瞬間、たいまつを持った男たちが現れ、藁に火をつけていく。火は燃え上がり、うす暗かった会場があっという間に炎で照らされる。そして燃えさかる火の中でハヌマン(猿の神様)が、踊りながら火を蹴散らしていく。そのすさまじい勢いは、まるで本当に神様が宿っているかのようだ。よく見ると足は素足。「熱くないのだろうか?」・・・、これが有名なファイアーダンスだった。ケチャダンスは一種のトランス状態で演じられている。だからきっと、素足で火を蹴散らしても熱く感じないのかもしれない。それにしてもすごい。
後で聞いた話だが、あのハヌマン役の男性は駐車場で切符を切っていた人らしい。そんな普通の人がスーパーヒーローに変身してしまうのだ。そして、90度の断崖絶壁を降りて、猿が捨てた携帯電話を取り戻して来てくれたおじさんもすごい。バリには本当に神々が住んでいるのかもしれない。普通のおじさん達が実は神々の化身だったりして・・・?
板山美枝子
1953年生まれ。19歳の時、初めての海外旅行でインドに行く。インドに魅せられて、やがてアジアが好きになる。26歳で結婚、現在22歳の息子と18歳の娘と夫と柴犬と暮らす。バリの音楽や踊りに魅力を感じて、いつかバリ島に行くことを夢見る。これまでに、インドのほかモンゴル、中国を旅した・・・すべてアジア。なぜか欧米には一度も行ったことがない。やっぱりアジアが好き。今年の3月、一番行きたかったバリ島行きを果たす。・・・そして、老後はバリに住みたいという夢が始まった。。。。
▼ このコーナーでは、あなたの世界旅行の体験記を募集しています。
情報更新:2007/11/04