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アメリカ西海岸、大自然の驚異の旅

西谷 勲

 西部劇映画が大好きだった私は、これら映画の背景に見られた赤茶けた大地と、そこから突き出た巨岩の背景が大好きで、夢でもいいからあの砂漠に行ってみたいと思っていたのは半世紀前。海外旅行を始めて長いがその夢が現実となったのは、08年5月であった。

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 米西海岸のサンフランシスコから入国、市内の観光後に世界遺産の「ヨセミテ」に向かった。この国立公園は市内からの片道約350kmの日帰り観光であった。平坦で広大な土地にはアーモンドやぶどうが栽培され、次第に草原から山岳地帯へと入った。そこには原生林の間から残雪の山脈と、刃物で切り落としたような巨大な岩山の姿の「ハーフドーム」がそそり立つ。 百万年前の氷河が造った深い峡谷には、花崗岩の岩肌から落差約800mの滝が見事だった。付近は滝や川との調和で、随所に絶景ポイントがあり素晴らしい。ガイドの説明を聞きながら撮影に汗を流し、夕方には市内に戻り、路面勾配が約30度もの坂をゆっくり走るケーブルカーが、ロマンチックな雰囲気でたまらない。

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 翌朝はラスベガスへ飛び、バスで世界遺産の「グランドキャニオン」へ。移動距離約490kmのバスでの長旅であった。道の周囲には大きな樹木も無く、砂漠地帯特有の灰色で無機質な風景が続く。三度の休憩をとりながら、夕刻にはグランドキャニオンに到着した。 グランドキャニオンは全長約460km、コロラド川が谷底を流れ、地球の割れ目のように広がる峡谷の幅は最大約30km。深さは約千600mにも達し、絶壁の展望台からは思わず息を呑む絶景に歓声が上った。  幾重からなる色の異なる地層は十数億年の歴史を語る。5時半近くの日没の太陽が七色の地層の景色を金色に染めた。夕焼けの絶景も素晴らしいが、場所を変えての日の出の絶景と共に感動の瞬間を二度体感した。 これより念願のモニュメントバレーまでは約290km。近づくにつれ次第に植物の姿が消えはじめ、ごつごつした赤い岩肌と共に、砂鉄を含む赤い砂地からあの突き出した岩山が見え始めた。その名は「モニュメントバレー・ナバホ・トライバル・パーク」であった。 ここには観光拠点のロッジがあり、付近には思いもよらぬあの映画、「黄色いリボン」の撮影に使った「小屋」が保存され、中には主演のジョンウエィンの姿(人形)があり、隣室には十数枚の映画のモノクロ写真が掲げられ、懐かしさがあらためて込み上げ感激した。 ここでは先住民族の「ナバホ族(アメリカインディアン)」の居留地で、合衆国公認の「国」として自治を行っていた。法律があり警察や大学にいたるまでの教育運営、石炭の採掘から販売、観光産業にいたるまで彼らが当然のような生活を営む。昼食を摂ったが「禁酒法」で、冷たいビールも当然ご法度で残念であった。

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ここからは彼らのジープに乗り換え、あの映画「駅馬車・荒野の決闘・アパッチ砦」等々、数カ所の絶景ポイントを巡った。行く先々には半世紀近く前に見たあの西部劇の舞台を目の当たりにして大感動。地平線と青い空、赤い大地から生えたように突き出た巨岩・奇岩のコントラストは素晴らしい絶景であった。 降雨がほとんど無い大地は乾き、凸凹道を低速で走るが、次々と行き交う四輪駆動車が舞い上げる赤い砂埃は、風と共に我々に覆いかぶさる。日本人は全員がサングラスにマスク姿での乗車だが、他の国の乗客は気にもせず、肌を大きく露出しサングラスのみだ。 どれほど滑稽に見えたのか我々の車に手を振り、「ブラボー! 」などと歓声が飛ぶ。応えるように手を振り「ヤッホー! 」と交わした。約1時間半のビューポイント巡りの観光を終えバス乗り換えたが、全身が赤い埃まみれでこれを丁寧に払うのが大変だった。 写真やビデオに絶景を心残りなく収め、満足で幸せな気分で帰路に着いた。ここは日帰りコースなので二泊目のグランドキャニオンのホテルを目指す。ホテル入りの前には、グランドキャニオンの大自然の勇姿を、隈なく映像で紹介するシアターで約30分間の観賞。 縦横数10mもある巨大画面で立体音響と共に、大渓谷を余すところ無く紹介。自分が上空やコロラド川に居るかのような壮大な眺めを脳裏に焼き付けられ、さらに大自然の驚異の素晴らしさ圧倒され魅せられた。


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著者近影 西谷 勲
作者経歴〜1941年生まれ66歳。学卒業後は建設会社へ入社各地を回る。20才代から趣味で全国各地を回る。1997年退職。1984年より世界各地を旅行。現在17回23カ国目。


このコーナーでは、あなたの世界旅行の体験記を募集しています。



情報更新:2008/9/12

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